公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク

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執筆■小林幸司  2010/5/19up
命をいただくということ
 最近、捕鯨の問題や大西洋のクロマグロの禁輸の問題などで日本が国際的に非難を浴びています。各国からの非難には政治的な思惑も絡んでいるかもしれませんし、日本政府の言い分も一理あるかもしれません。ただ、ここではどちらの言い分が正しいのか、などと議論するつもりはありません。

 本当に大事なことはもっと根本的なことじゃないかと思うのです。もちろん種が絶滅するかどうかは大きな問題です。でも絶滅しなければ獲っていいとか絶滅するから一切獲ってはいけないとかそういう次元の問題なのでしょうか。

 人間に限らず、世の中に生きている動物はみな何らかの命を食べて生きています。弱肉強食(ここでいう弱肉強食は文字通り強い動物が弱い動物を食するという意味です。)は、世の中の摂理です。そう言う意味では、人間が鯨やマグロを捕獲して食べたり利用したりすることは何の不自然もないように思います。でも、大型の船舶や最新の技術によって大量に生き物を乱獲し、備蓄していくことは自然な行動なのでしょうか。 やはり、“生きるために命をいただくということ”の意味をよく考え、いただく命に対して感謝の気持ちを忘れてはいけないと思います。 
 
   ある南太平洋の島国では、先進国から最新のエンジンを搭載した漁船を購入したとき、少し使ってみてすぐに使うのをやめてしまったそうです。その島の猟師はこう言ったそうです。

「この船は速すぎる。これで網を引くと必要以上に魚がとれすぎてしまう。将来にわたって必要な魚を守っていくには、以前の古い船でとれるくらいがちょうどいい。とりすぎては魚にも申しわけない。」

 また、カナダやグリーンランドに住むイヌイットは今でもアザラシなどの猟を行っていることは有名ですが、イヌイットの人々はとった動物の目を海に返すそうです。その意味は

「いただいた命に感謝するとともに、次に生まれ変わってきたときに迷わずまたここにたどり着けるように目を返すのだ。」

ということです。
 先進国に暮らす私たちも同じことをしよう、などと言っているわけではありません。それは無理な話しです。でも同じ感謝の気持ちを持ちつづけることは誰にでもできることです。命をいただくことの尊さや大事さに気づいていれば、お金のために乱獲をしようなどという発想にはならないのではないでしょうか。

 今、漁業で生計を立てている人には大変な時代であり、何を言ってもきれいごとだと言われてしまうかもしれません。でも、漁業者にあまり魚をとるななどと言いたいわけではなく、この機会に、種の絶滅などの危機が起きたのはどうしてなのか、を全ての人々に考えて欲しいのです。

 答えは間違いなく、そこにあります。


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