公益財団法人 みやぎ・環境とくらし・ネットワーク

私たちは、緑と水と食をとおして暮らしを考え、地球と地球環境の保全に寄与するために、多くの市民、知識人、協同組合、企業、団体で作られた環境NGOです。

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仙臺農塾

仙臺農塾プロジェクトVol.3 第3回
大人の遠足・加美町編「里山でパワーチャージ!~加美町の風土を味わう~」

日時 2014年10月26日(日) 8:45~17:30
会場 加美町「食の文化祭」、農家レストラン「ふみえはらはん」(加美町字中嶋南田1-19)、小野田小瀬屋敷地区「小瀬菜大根」農家
ゲスト 渋谷文枝さん(ふみえはらはん代表)、早坂良平さん(加美町小瀬菜大根農家)
参加費 5,500円
参加 20名

グリーンツーリズムに早くから取り組む加美町には、食の文化祭、グリーンツーリズム、有機の野菜やお米づくり、などなど食農分野の先進的な取り組みが集まっています。加美町の豊かな食、農業、風土に触れて、味わい、体験して、日々の疲れを癒しませんか?

今回の仙臺農塾は、「食の文化祭」・「ふみえはらはん」・「小瀬菜大根農家、早坂さん宅」の3本立て。
朝9時に仙台駅を出発し、まずは加美町で行われている「食の文化祭」へ向かいました。

1999年より行われているという食の文化祭は地域の普段の食卓に並ぶ料理をお母さんたちが持ち寄って展示するというもので、今年で17年目。
当時、地域の特産物づくりに関わっていた結城登美雄さんのインスパイアを受け、旧宮崎町でスタートした取り組みです。ここから全国80か所に広がっていったそうです。
加美町の食文化を町内外の人たちに発信することにより、地域活性化と地元の食の大切さを伝えていくことを目的としています。
見本市なので料理を食べることはできません。
地域の人々が生活の中にある貴重な資源を発掘したり再発見したりするための催しなのです。食べられませんが、レシピが表示されているので、家で挑戦できるよう写真を撮りました。

「ふみえはらはん」に到着した一行は、隣接する「おりざの森」という農家民宿でアップルパイづくりを行いました。
おりざの森の建物は角田市にあった養蚕農家の古民家を移して改装したものだそうです。
気密性が高いため、暖房はストーブ一つで十分なのだそうです。
また、天井や床下が高いので、チェロなどの楽器を演奏するととてもよく響きます。
おりざの森では、演奏会や落語などのイベントも行っています。
民宿なので泊まることもできます。宿泊料金は1泊1万円。人数が増えても料金は同じなので、大勢で行くとお得になります。

今回作ったアップルパイは、りんごを煮ないでつくる簡単アップルパイです。
刻んだりんごに、小麦粉・お砂糖・スパイスを混ぜた粉をからめ、四角く切ったパイ生地に包めば、あとは卵を塗り切込みを入れて焼くだけ。
りんごはふみえはらはんでとれたものを使いました。

りんごパイの焼き上がりを待ちながら、ふみえはらはんで昼食です。
ふみえはらはんの建物は、築200年近く経つという古民家を改装してつくられていて、登録有形文化財に指定されています。
囲炉裏や梁があって、こちらも素敵な雰囲気です。
参加者の中には、洗練された古民家の雰囲気にため息が出ている人もいらっしゃいました。

ふみえはらはんは、1996年にオーナーの渋谷文枝さんが地域の主婦仲間と共に開業したお店で、「農家レストラン」の草分け的存在です。「農家レストラン」という言葉も、渋谷さんたちの取り組みを見たNHK取材班が命名したものだそう。現在、県内に50軒あるという農家レストランの先駆けです。

どのお料理も、この地域の人たちが、昔から食べてきた料理たちです。
菊の花のお浸し。いつもは付け合せ程度の菊の花が、これでもかというほど入っていました。食べにくいえぐみもなく、菊の花の独特の風味を感じました。
さといも、しいたけ、ニンジン、こんにゃくの煮物。さといもは握りこぶし一つ分ほどもある大きさ!中まで軟らかく味がしみていました。
大根のお味噌汁。お味噌汁とは思えないほど、大根がぎっしり入っていました。これだけでおなかが満たされそうでした。 りんごジュースはふみえはらはんで育てたりんごを使っています。やさしく柔らかい甘さで、りんごらしいフレッシュさが感じられるジュースでした。
甘味は煮たいちじく。ぽったりした食感で、口の中いっぱいにイチジクの甘さが広がりました。
他にも酢で漬けた梅干しも。以前、この地域で塩分の取り過ぎが指摘されたために酢で漬けているそうです。ふみえはらはんで出している食事も、以前は塩辛いと言われていたのだとか。当日いただいたお食事は、どれも素材の味が生きたやさしいお味でした。

ふみえはらはんを運営していらっしゃる渋谷文枝さんです。
ふみえはらはんは今年で18年目。
渋谷さんによると、農家レストランを始めた頃は、農家の普段の食事を出すのは「よそ様に対して恥ずかしい」、という思いがあったそうです。
でもそのうち、食べ物をいかに採って、いかに食べるかという、山で育ったものしか知り得ないこと、渋谷さんたちの暮らしの中の知恵そのものが持つ価値がわかってきた、とお話しくださいました。
一時期はハイカラなお料理を出していたのですが、ここ数年は創業時のような、この地域で昔から食べられているお料理を出しています。
食材はすべて自家製か、周囲の山林でとれたもの、あるいは近所の農家さんから直接仕入れられたものだそうです。加美町には、何でもあるんですね。
お米は合鴨農法で無農薬で育てているそうです。
食材は安心・安全なものを基本としていて、化学調味料は使用していない。
外国人の方も多く来られるので、ベジタリアン食にも対応されているのだとか。

農家レストランをやっていると、外から人が来て、情報がもらえることが楽しみなのだそうです。10年やっていて、話が聞ける楽しみ、幸せもあると気付いた、とのことでした。

お客さんにいろいろと教えてもらって、試行錯誤したけれど、現在のお料理は元のスタイルに戻ってきている、とのこと。季節の味や自分たちのスタイルが一番いい、ということになったのだそうです。

自分たちの地域の食に誇りを持ち、それを大切にしてくのがふみえはらはんのスタイルです。

お料理を食べ終わったころに、りんごパイが焼き上がりました!どのパイもきれいに焼けています。
お昼ご飯をたべておなかがいっぱいだったのに、ひとつぺロっとたべられちゃう美味しさでした。

お昼ご飯の後は、小瀬菜だいこんを生産されている早坂さんのお宅にお邪魔しました。
小瀬菜大根はこの地域で栽培されてきた伝統野菜で、戦国時代に今の岐阜県辺りから持ち込まれたという説があるそうです。
かつてはどこの家庭でもつくられていたそうですが、現在はたった4軒程度に減ってしまったそう。自家用以外にもつくられているのは、早坂さんただお一人、とのこと。
また、小瀬菜大根は葉物なので、流通させるのが難しい食材です。
また、ほかの地域で育てても、固くて食べにくい大根に育ってしまいます。そのため生産量を増やすにも限界があります。
以前、給食に使いたいとの声があったのですが、十分な量を供給できないのでお断りしたそうです。

お話しを聞いてから、収穫体験をさせていただきました。
美味しい大根を見分けるには、葉をどけて茎の部分が広がっていないものを選ぶのがコツ。

これが小瀬菜だいこんです。長さは一メートルちょっとあります。
地元では、葉と根は食べずに茎の部分だけを食べます。しかし最近は葉の部分を炒め物にしたり、根は辛いのですりおろして焼肉にかけたりして食べているそうです。

収穫後、早坂さんがその場で浅漬けを作って下さいました。
大根の茎を刻んだら、よく塩もみして、その後塩漬けの紫蘇の実と混ぜてしばらくつければ完成です。
シャキシャキとして美味しいお味でした。早坂さんはお茶漬けにして食べるそうです。

グリーンツーリズムの先駆け、加美町にはまだまだ貴重な資源や文化がたくさんあるんですね。
こうして市民主体で取り組んでいる加美町はきっとこれからも先進的な取り組みをし続けていくのではないでしょうか。 また加美町に遊びに来たいと思います!