【訪問情報】
■訪問日:2023年12月8日(金)
■訪問先:株式会社北洲 リノベーションモデルハウス(仙台市泉区館)
■訪問者:
取材・文:宮城県地球温暖化防止活動推進員 稲田陽一
写真・図・編集:MELON 早川昌子
断熱効果のある住宅は光熱費が減り、結果としてCO2削減になります。地球温暖化防止活動推進員として住宅のリフォームに目を向けてみました。また、補助金制度についても併せて教えていただきたいと思い、MELONの法人会員である株式会社北洲のブランドマネジメント室 志村ちひろ さんにお話を伺いました。
築36年の戸建住宅をフルリノベーションした展示場:2階建て、床面積およそ28坪
リフォームとリノベーションの違い
志村さんによると、日本の住宅を欧米の住宅と比較した場合、次のような課題があるとのこと。
① 冬は寒く、夏は暑い
② エアコンの効きが悪く、冷暖房代UP
③ 壁や窓のカビ、結露発生しやすい
④ 室内の温度差によるヒートショックの問題(風呂、トイレの高齢者対策が必要)
リフォームとリノベーションの違いについては、リフォーム(reform)は、老朽化した住宅を修繕する意味合いが強く、リノベーション(renovation)は、私にとって聞き慣れない言葉ですが、改修工事により建物の価値を高めることだそうです。
さらに、リビングの窓や台所等を部分的に改修する工事のことを部分リノベーション、外装や壁を全て取り払い、骨組み状態から行うことをフルリノベーションと呼んでいるとのことでした。
断熱リフォームについて
次に断熱リフォームについて伺いました。
断熱リフォームの種類としては、外壁、屋根、内壁、床などに断熱材や断熱パネル、断熱塗料などを使ったり、内窓(二重窓)にするなどがあるそうで、そのうちのいくつかをご紹介します。
●屋根(天井)
・断熱リフォームで使われている素材は「吹込グラスウール」
・グラスウールはガラスの素材なので燃えない。(火事の延焼を考慮し、ガラス素材を使用)
・施工の際は、入り組んだ天井裏の奥までグラスウールが入るように、専用の機械で送風しながら吹き込む
●内壁
・断熱リフォームで使われている素材は、「グラスウール」
・天井と同じく、断熱と防火の両方に対応
●床下
・断熱リフォームで使われている素材は、「吹付ウレタンフォーム」
・施工の際は、厚み90mmに吹き付けるため床に潜って作業する
おすすめの断熱リフォームは窓に注目!
限られた予算内で断熱リフォームをする場合、志村さんのおすすめは、「内窓」をつけて二重窓にすることだそうです。理由は、熱の6割が窓から逃げるからです。逃げる熱を100%とすると、窓から60%、天井から5%、床から7%、外壁から15%です。
また、内窓をつけて二重窓にする場合、生活空間全体が暖かくなるようにご提案することが多いそうです。
リビングだけではなく、トイレやお風呂の窓も断熱リフォームすることで、室内の温度差が減り、ヒートショック防止にもつながるとのことでした。
お部屋の「寒さ」や「光熱費の高騰」が身体やお財布にとって負担となることを鑑み、さらに掘り下げて教えていただきました。
展示場2階の部屋(上の写真)は、既存のアルミサッシの窓はそのままで、部屋内に樹脂製〈PVC(ポリ塩化ビニール)〉の内窓が取り付けられていました。
アルミは熱伝導率(=材料内の熱の伝わりやすさを示す割合)が、樹脂(PVC)の1000倍なので、熱をかなり逃がしていまいます。
この方法であれば、マンションでもできる場合が多いとのことでした。
展示場1階の部屋は、間取りが変わったこともあり、既存の窓は外され、ペアガラス(二重層)の高遮熱仕様の窓に替えられていました。こちらの窓枠も樹脂製で、2枚のガラスの間にはアルゴンガスが注入されており、さらに、室内側のガラスには特殊金属膜がコーティングされ、熱貫流率1.1w/㎡・k(値が小さいほど熱が伝わりにくい)となっており、冬は室内の快適な暖房の熱を逃しません。窓枠とガラスとで窓全体の断熱性能が高められると結露が軽減されます。夏は、暑い日差しをカット(日射熱を62%カット)します。
なお、熱貫流率の値により補助金の額が変わります。詳細は後述のとおり。
志村さんによれば、リフォームのご相談をうけるとき、まずは無料で「住宅診断」を実施されているとのことでした。「住宅診断」では、お客様が納得のいく効果的なリフォームをすすめてもらうために、専用の計測器を用いて建物の断熱性能等を数値で見える化するのだそうです。
断熱診断の診断書:フルリノベーションの前(上)と後(下)で比較すると、外の気温が-2℃の時、リノベーション前は、エアコンのある部屋のみ16℃、他の部屋は7℃、リノベーション後は、エアコンのある部屋は18℃、他の部屋は15℃。
また、展示場の例ではありませんが、節電効果についての資料も見せていただきました。資料(※)によれば、リフォーム前と後ではおよそ31,000円お得になるという試算でした。
| Before | After
年間暖房費 | 155千円/年 | 125千円/年
年間冷房費 | 6千円/年 | 5千円/年
合計 | 161千円/年 | 130千円/年
※資料提供:株式会社北洲
木造2階建ての1階(67.89㎡)を内窓リフォームした場合の冷暖房費(エアコン使用時)を比較。
平成28年省エネ基準に基づき算定された一次エネルギー消費量から光熱費が算定されています。実際の気象条件や住まい方等の影響により、シミュレーション結果と実際の暖冷房費とは一致しない場合があります。
ポイントは、断熱・気密・換気の3点セットで考えると効果的とのことでした。
他にも窓の断熱方法として「節電ガラスコート」があるとのご紹介がありました。窓ガラスに塗る断熱塗料で、1㎡あたり12,000円くらいです。西日対策にもなり、商業施設やオフィスビル等の窓にも使われる例が増えているそうです。
断熱リフォームは補助金でお得に!
さて、リフォームについては嬉しいことがあります。それは、補助金制度が利用できる点です。そこで、令和6年3月から交付申請受付開始予定の国の補助金をご紹介します。
2023年12月7日の環境省の報道発表資料によれば、「先進的窓リノベ2024事業」という補助制度があり、例えば戸建の「内窓設置」の場合、熱貫流率Uw1.1以下で面積1.4㎡以上の窓1枚あたりの補助額は11万2千円、「外窓交換(カバー工法)」の場合、熱貫流率Uw1.1以下で面積1.4㎡以上の窓1枚あたりの補助額は22万円となっています。
補助額は、建物のタイプ(戸建及び低層か中高層)、工事の方法、窓1枚あたりの面積や熱貫流率の値により異なります。
実際の申請は、工事の請負事業者が行いますので、補助金を使いたい旨を伝え、詳しい説明をうけましょう。
交付された補助金は住宅所有者等に全額還元される必要があり、申請にあたっては還元方法について、予め工事の請負事業者が住宅所有者等に説明し、住宅所有者等の同意を得る必要があります。
補助対象期間は、令和5年11月2日以降に工事に着手し、令和6年12月31日までに工事が完了するもので、交付申請期間は、令和6年3月下旬~遅くとも令和6年12月31日の予定となっています。
<申請のフロー図>
補助金について詳しくは環境省の報道発表をご覧ください。
https://www.env.go.jp/press/press_02464.html
本記事が、皆様の断熱リフォームについての理解につながれば幸いです。