MELON水部会では、2022年度から塩竃市浦戸諸島で水環境に関わる文化・歴史や自然について調査活動をしてきました。生活の糧となる「水(飲用水・用水)をどのように確保されてきたのか」、「水の神さまが祭られているか」、「環境変化にともなって水産業などへは影響は出ていないか」など、島々ならではの「水」と暮らしとの関わりを知ることが、私たちの日頃の水問題がさらに理解できるのではないか、と考えてきました。
そして毎年1島を訪問し、現地の方々との交流や散策を楽しんできました。
2022年:野々島「海岸でのマイクロプラスチック調査体験」(レポートはこちら)
2023年:桂島「雨降石って何?」(レポートはこちら)
2024年:寒風沢島「島の自然と共生した暮らしや歴史探訪」(レポートはこちら)
以下、2025年4月27日に訪問した朴島の活動内容「朴島散歩とだんべこ船から地球温暖化の影響を考える」を報告します。

まず、塩釜からの連絡船を下り、朴島に立ち入り、散策の開始です。出迎えてくれた見事なタブノキの森が目の前に見え、印象的でした。この日は天候に恵まれ、散歩日和となりました。

参加者全員が島に集合すると、現地案内ガイドの内海信吉さんから、手作りの「てるてるクラゲ」をいただきました。一匹一匹色や形が違い、とても個性的。手作りだからこその温かみがあり、ほっこりした気持ちにさせてもらえました。

午前中は朴島の中を散策! ガイドの内海さんから、道中で見られた植物や、朴島の暮らしなどについて解説していただきました。

しばらく坂を上ると、見えてきたのは一面黄色に彩られた菜の花畑! 菜の花畑の奥には、これまた見事なタブノキの森が見え、そのコントラストが素晴らしかったです。この菜の花畑は、仙台白菜の種を取るために栽培されているとのことでした。

菜の花畑の奥にあったタブノキの森の中。神秘的な空気に包まれており、とても心地よい空間でした。タブノキはこの地域における潜在自然植生(人の手が加わらなかった場合に、自然に生育していると考えられる植生)であり、これほどタブノキの森が残されている朴島は、豊かな自然が残されている島なのだと感じました。
タブノキの森の中で鳥の巣を見つけました。もう使い終わったものでしたが、実物の巣を見て、枝や茎を一つ一つ集めて、一つ一つ編んでいった鳥の能力に、改めて驚かされました。タブノキの果実は鳥の餌資源にもなります。もしかしたら、この巣の住人だった鳥が、タブノキの実を食べていたかもしれません。このタブノキの森が、鳥などの生き物を育んでいるのだなと改めて感じました。

午後は、だんべこ船に乗るグループと、浦戸諸島を散策するグループに分かれました。だんべこ船の乗船グループでは、ガイドの内海さんから、浦戸諸島周辺の自然環境やカキ養殖について説明していただきました。

カキ養殖の説明のために、なんと、養殖棚のすぐ近くまで船を寄せていただけました。養殖の現場を間近で見ることができ、他ではできない貴重な体験です。近年、海水温が上昇した影響で、カキに付着する生物が変化しているとのこと。なかにはカキの成長に影響をおよぼす生物もおり、これまであまりみられなかったため、対策が追いついていないとのことでした。

浦戸諸島周辺の自然環境を説明いただくために、アマモという海草が多く見られる場所に連れて行っていただきました。しかし、その場所に着くと、数ヶ月前には生育していたはずのアマモがいなくなっていることがわかりました。アマモがいなくなってしまった原因の一つとしては、海水温の上昇も考えられるとのこと。多くの海の生き物にとって重要な存在であるアマモが、松島湾では地球温暖化の影響で数を減らしているかもしれません。

そしてだんべこ船のクライマックス! 現地では「ボラ」と呼ばれ、波が穏やかでないと通過することができない洞穴に到着。この日はずっと天気が良く、波も比較的穏やかでした。もしかしたら、てるてるクラゲの御利益かも!? ボラを通過する時はとてもスリリング! 内海さんの操縦技術の高さに驚かされるとともに、だんべこ船に乗らなければできない貴重な体験ができ、とても良かったです。
今回の朴島散歩では、朴島の豊かな自然を楽しむことができました。また、地球温暖化による海水温の上昇が、浦戸諸島周辺の自然環境や水産業に、既に影響を及ぼしていることも学べました。今回出会った島周辺の豊かな自然環境に感謝するとともに、この自然環境をどうしたら守っていけるのか、考えさせられる機会となりました。
(写真・文 MELON水部会)