【訪問情報】
■訪問日:2026年6月19日(金)
■訪問先:株式会社 千田環境ホールディングス・有限会社 千田清掃
■訪問者:MELON情報センター 石垣政裕(MELON理事)、菊地淳、吉田美緒
株式会社 千田環境ホールディングス・有限会社 千田清掃(以下、千田清掃)が行っているバイオディーゼル(以下、BDF)の燃料製造・販売について、プラントの見学と共に取材してきました。
千田清掃のBDF製造や環境への取り組み等について執行役員 常務・鈴木一生様、営業企画チーム 村田和宏様・高野友美様よりお話を伺いました。
プラントの見学
大崎市内にある千田清掃の事務所とBDF製造プラントにお邪魔し、早速敷地内にあるプラントを見学させていただきました。
BDFの原料となるのは、飲食店などから回収された「植物性の使用済み食用油」です。

製造にあたっては、まず不純物を取り除く「前処理」を行います。このとき、油の回収に使用されたペール缶の洗浄を、地元の就労支援施設の方々に依頼しているとのこと。事業を通じて地域福祉との連携が生まれている点も非常に印象的でした。
前処理を終えた油は、遠心分離機にかけて濾過されます。その後、メタノールと触媒を加えて化学反応を起こさせ、静置沈殿させることで、ようやく「BDF」と「グリセリン」の二つに分離します。

分離された「BDF」(黄色)と「グリセリン」(黒色)
驚いたのは、この過程で出る副産物や不純物が、すべて次の資源へと生まれ変わっていることです。
不純物: 飼料などに活用
グリセリン: 堆肥の発酵促進剤として活用に期待されている
なんと、このグリセリンは植物の成長にも役立つそう!
千田清掃の敷地内でグリセリンコンポストを加えた土とそうではない土にそれぞれトマト、ズッキーニを植えて比較したものを見せてもらいました。

ズッキーニの苗。左側の植木鉢がグリセリンコンポストを加えた土
その結果は一目瞭然!文字通り「捨てるところが一切ない」循環の仕組みに、これからの可能性が期待されます。
分離された燃料は、さらに洗浄を経て不純物の少ない状態へと磨かれます。そこからさらに「減圧蒸留」を行い、急激に冷却することで、極めて純度の高いBDFが精製されます。最後に厳密な分析を経て、ようやく製品として出荷されていきます。
千田清掃の最大の強みは、原料の「回収」から「製造」、そして「販売」までを一括で行う一気通貫の体制(オールインワン)にあります。
妥協のない品質管理によって作られる高クオリティなBDFは全国的にも評価が高く、2026年1月には「みやぎ優れMONO」にも見事認定されました。
原料が植物油であるBDFは、確実な脱炭素(カーボンニュートラル)につながるだけでなく、地域の資源を地域で回す「地産地消」、さらには「ごみの削減」にも直結します。まさに、これからの持続可能な社会に欠かせない、可能性に満ちあふれた燃料であることを再認識する機会となりました。
◇◇◇
プラントをじっくり見学させていただいた後は、鈴木様と高野様にお話を伺いました。
バイオディーゼル燃料(BDF)事業に取り組むきっかけ。
千田清掃は1952年にトイレの汲み取り事業からスタート。地球温暖化への問題意識や社員からの発案をきっかけに、2005年4月からBDF事業を開始しました。
当日、日本国内でもBDF事業は地球温暖化対策への機運が高まっており、多くの企業が参入したものの国の基準がなく粗悪品によるトラブルもあり、バイオ燃料のイメージは悪くなり、国もブームののち、すぐに手を放してしまうような状況でした。
多くの企業が撤退していく中、回収・製造・販売までを一括で行う全国的にも珍しいスタイルで行っていた千田清掃は「自分たちの燃料の質を徹底的に調べる」ことにこだわり、プラントに蒸留機を導入。コストをかけて品質を極限まで高める道を選びました。この時の「妥協しない品質へのこだわり」が、現在の「日本トップクラスの品質」という圧倒的な強みへとつながっていきました。

エコマーク認定番号第1号! 製造したBDFも自分たちの手で販売
地域で挑むBDFの地産地消
千田清掃の鈴木氏から、日本国内で回収された良質な使用済み食用油の多くは、海外から高く買い取られて国境外へと流失してしまっていることを伺いました。さらに深刻なのは、そうして海外へ流出した油がどのように処理されているのか分かっていないのが実情です。
さらにライフスタイルの変化に伴い、家庭で油を使用する機会自体は減少しつつあります。しかし、千田清掃は長年地域で回収を続けてきた信頼の積み重ねにより、全体の回収量は増加傾向にあります。
とはいえ、同社が掲げる高い目標値から見れば、まだまだ十分な量には達していないとのこと。
回収量をさらに引き上げるため、千田清掃が力を注いでいるのが、次世代への「教育」と「地道な啓発活動」です。 地元の小学校や高校などを訪れ、出前授業やキャリア講演を積極的に実施。授業では、実際に子どもたちにバイオ燃料で動くカートに乗ってもらい、「焼き鳥のようなにおいがする!」といった五感を通したリアルな体験を提供しています。
「環境に良いから」という理屈だけでなく、地域の人々に実際に触れて、驚いてもらい、ファンになってもらうこと。それこそが、制度の壁を越えて地域全体へBDFを普及させていくための、最も確実な一歩となっています。

バイオ燃料で動くカートは子どもたちに大人気! 発電機の排気ガスの匂いも体験
【未来への展望】点を線に。スポーツ、農業、福祉とつながる「循環型社会」の創出
20年前に日本国内でBDF事業が始まって以来、いまだに国としての統一された明確な品質基準がない現状があります。だからこそ、千田清掃は今期以降の大きな目標を掲げています。それは、同社がこだわり抜いて培ってきた「千田清掃の品質基準を、そのまま日本のスタンダードにしていく」ということ。 サンプルを求める声が全国から寄せられている今、同社は名実ともに日本のバイオ燃料界を牽引する存在になろうとしています。
さらに、千田清掃は様々な領域の壁を越えたユニークな連携にあります。これまでバラバラだった地域の取り組み(点)を、同社がハブとなることで一つの大きなストーリー(線)へとつなぎ始めています。
今回の取材を通して私たちの食生活から生み出される食用油、再生に至るその行方を追って行くうちに、一企業の歩むべき一つの矜持が見えてきます。地域が環境を見つめていくうえで、とても参考になりました。もっと多くの方に知ってもいらいたいと思っています。ご協力ありがとうございました!
■訪 問 先:株式会社 千田環境ホールディングス・有限会社 千田清掃
■事業内容:バイオディーゼル燃料製造販売業、各種清掃・収集運搬など
■設 立: 1952年10月
■所 在 地 :〒989-6254 宮城県大崎市古川狐塚字西田77番地
■WEBサイト:https://clean77.jp/